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Hitachi

「アーバンエース HF Plus」
開発プロジェクト

多くの人に寄り添い、安全・安心・快適な
移動を提供するエレベーターを

日立ビルシステムの主力製品である、標準型エレベーター「アーバンエース HF Plus」。HFは「HUMAN FRIENDLY」の略であり、そこには「昇降機やシステムを意識させない自然な人の移動をサポートする」という開発コンセプトが込められている。2021年に発売された「アーバンエース HF」、その2年後の2023年に意匠や機能の強化を図った「アーバンエース HF Plus」を発売。この2機種の開発プロジェクトに携わった4人の技術者に、開発にかける思い、苦労、喜びを語り合ってもらった。

PROFILE

  • 所属は取材当時のものです。
  • 製品開発本部 エレベーター制御開発部
    制御システム開発グループ

    松浦 大樹

    2015年入社/情報理工学研究科

    入社後、現部署に配属され、制御装置や制御システムの開発を担当。その後、部品品質保証部 電気部品品質保証グループを経て、2020年より現職。今回の開発プロジェクトでは、電気パートとして大きなモデルチェンジがあったため、その解決に向けた取り組みの中で自身の力もさらに向上したと感じている。

  • 製品開発本部 エレベーター制御開発部
    制御装置開発グループ

    涌田 理人

    2017年入社/情報理工学研究科 先進理工学専攻

    入社後、エレベーター制御開発部に配属され、意匠装置品の開発を担当。その後、エレベーター設計部 電気設計グループでの実習を経て、2020年より現職。今回の開発プロジェクトでは、新しいことにチャレンジすることで生まれる変更点に関して、あらゆることを考慮して設計する力が身についたという。

  • 製品開発本部 エレベーター機構開発部
    機構装置開発グループ

    戸村 好貴

    2018年入社/融合理工学府機関工学専攻・材料研究科

    入社後、アーバンエース HFの要素研究開発、2020年よりリニューアル開発を担当。2021年、エレベーター設計実習を経て、2022年よりアーバンエース HF Plusの開発に携わる。今回の開発プロジェクトでの収穫は、設計エンジニアとしての実力が格段に向上したことだと語る。

  • 製品開発本部 エレベーター機構開発部
    機構システム開発グループ

    深澤 奏

    2018年入社/工学院機械系機械コース

    入社後、エレベーターシステムに関連する機械品の開発設計を担当。2022年よりアーバンエース HF Plus開発プロジェクトに参画。今回の開発プロジェクトで得たことは、設計者としての技術力を身につけることができたこと、開発過程で各部門の方々との関係性が築けたことだという。

THEME 01

新機種開発に向けた
ぞれぞれの役割と思い

松浦

松浦アーバンエース HFではエレベーターの緊急時の4カ国語放送を行うための制御基板の開発を担当。それまでの日本語と英語に、中国語と韓国語を追加し、もっといろいろなお客さまに寄り添う「HUMAN FRIENDLY」を具現化した開発の一つといえますね。

涌田

涌田私がアーバンエース HFで担当したのは、かご内操作盤やホールボタンなど、新デザインを適用した装置品の開発。入社以来、初めてのモデルチェンジで、デザインと保全性・量産性などの両立に苦労しました。半面、販売後はYouTubeに上がっている動画で操作盤の出来栄えを見て、一人でニヤニヤ満足感に浸っていました(笑)。

松浦

松浦いいね。しかし、満足感に浸る間もなく、すぐにアーバンエース HF Plusの開発プロジェクトが始動しました。アーバンエース HF Plusで一番大きく変えたのは、これまで昇降路の下部に置いていた巻上機と制御盤を頂部に置いたこと。電気的にも機械的にも大きなチャレンジでした。その一方、近年、水害が多発する中、巻上機や制御盤が浸水しエレベーターが動かなくなるというリスクが高まっているため、困難でもやるべきという意識は強く持っていました。

涌田

涌田社会ニーズに迅速に応えたいという思いから、開発期間が限られていたことも大変でした。そんな中、私は巻上機と制御盤の頂部への移動によるメンテナンス機能追加に伴う変更点に対して、効率的な標準化整備を担当しました。何が変更点となるのか、あるいは変更しなくていいのか、しっかりと整理した上で開発に臨みました。

深澤

深澤私は本格的に新機種の開発プロジェクトに参画したのはアーバンエース HF Plusから。巻上機を昇降路頂部配置としたことによる巻上機指示構造体の開発を担当しました。それまでいろんな部署と一丸となってプロジェクトを進めるという経験がなかったためプレッシャーもありましたが、期待感の方が大きかったです。

戸村

戸村私はアーバンエース HFでかご枠の開発を担当。フルモデルチェンジしたため、さまざまな細かいところの設計が増えたり、開発試験では想定と違うところにエラーが出たりとさんざん苦労しました。なので、すぐにアーバンエース HF Plusの開発プロジェクトメンバーにアサインされた時は、またあの苦労をするのかと(苦笑)。しかし、アーバンエース HFの時は入社1、2年目でベースは先輩が作ってくれたのに対して、今度は自分で一から作れるし、いろいろなことを試せる。実りは大きいだろうとワクワクしました。

THEME 02

直面した難題にいかに挑み、
どう乗り越えたか?

戸村

戸村印象に残った課題は、事前検討では全く問題ない項目の強度試験でのNGでした。なぜNGが出ているのか皆目検討がつかない状態の中、開発を終了すべき時期が迫ってきて。現場で物を見た方が、現象がわかるだろうということで、品質保証部の方と相談し、据付状態は正しいのか、試験条件は正しいのか、荷重の負荷の仕方はどうなのか、再現性はあるかなど、一つ一つ確認しました。その後、有識者に相談したり、品質保証部と議論を交わしつつ、最終的に対策構造部品を取り付けて再度試験をしたところ、OKが出た時はほっとしました。

深澤

深澤迅速な製品の市場投入をめざすために、限られた開発期間内に、開発課題をクリアし目標通りの発売を完遂することが、最も難しい課題でした。その課題を乗り越える上で大きな役割を果たしたのは、さまざまな部署横断で組成したプロジェクト体制。通常はメンテナンスなど現場の作業を行なっている部門の方々にも、開発プロジェクトに参画してもらいました。そんな中、いろんな部署の方々のご意見を聞きながら、さまざまな課題を解決できたかなと思っています。

松浦

松浦その一方で、施工性・保全性の向上に向けた、各部門からの要望や改善意見を聞いて、それを取捨選択するのは大変でした。とはいえ、建設業界の2024年問題による残業時間の規制がある中で、今までの作業工数では日数が伸びてしまう可能性があるため、施工性・保全性の向上は重要な市場課題。それに取り組むのは、我々の当然のミッションです。でも、新しいことをやろうとすれば、必ず新しい問題が発生します。一回設計した内容が一発OKということはなかなかなくて……乗り越える方法は試行錯誤あるのみでした。

涌田

涌田苦労したのは、メンテナンス機能追加に伴い設置することになった簡易点検盤の開発です。開発にあたってホールインジケーターボックス内に実装するには、追加されるオプション仕様を含めて、必要なケーブル・実装スペースを確保する必要がありました。純粋に部品が増えるため別ボックスにする案も考えましたが、それでは原価アップにつながってしまいます。そこで各種仕様に対して実装可否を確認し、極力、標準構造の中に納まる形状や作業性を検討し、関係者との協議、検証を繰り返し重ねて……。その結果、ようやく簡易点検盤の開発が実現できました。

THEME 03

開発プロジェクト経験のもと、
これから挑戦したいこと

松浦

松浦アーバンエース HF Plusの開発に携わって改めて、当社には開発スピードに対応できる技術力があるのだなと感じました。みんなで仕様を固めてそれに向かって団結してやっていくと、どんな困難があっても実現できるのだなと。我々製品開発部門だけでなく、施工部門、営業部門、マーケティング部門、さらには日立グループの研究所の方々まで、いろんな部門のいろんな知見・経験を出し合えるのは大きな強みですね。

深澤

深澤本当にそうですね。たとえば、巻上機本体には、中国に開発拠点を持つ海外グループ会社に開発してもらったものを適用したりしています。限られた開発期間の中で完了させるにあたって非常に助けられました。

涌田

涌田当社は設計、開発から施工、保全まで一貫して携わってきていて、その中で吸い上げたいろんな意見を製品づくりに反映できる。それは大きな強みなのだなと実感しました。

戸村

戸村一気通貫の体制でないとつくれない、質の高いモノづくりが実現できていますよね。あと、開発の中で感じたのは、巻き込む力の強さ。開発にトラブルはつきものですが、そんな時、いろんな部署を瞬時に巻き込むことができて、巻き込まれた部署も即座に協力してくれます。

深澤

深澤今回、初めて新機種の開発に本格的に携わることができ、そこでたくさんの知見を得られました。次はこれらの知見を生かして、より難しい課題に挑戦していこうと思っています。

松浦

松浦実は次期エレベーター開発では、制御システムを一新。また大きなチャレンジが待ち受けています。今までにない革新的な技術を使う予定なので困難は多々あると思いますが、そこをみんなの力を結集することで一つ一つクリアしていって、最終的には、お客さまの安全性を確実に確保した上で、より良いエレベーターを実現していきたいです。

戸村

戸村次期エレベーター開発では、いかに原価コストを下げるかというのも大きなテーマに。かご枠の中身の部分でいかに無駄を見つけて削っていくかを追求していきたいと考えています。

涌田

涌田エレベーターの魅力増しをしつつ、原価コストを下げる。これは我々の永遠の開発テーマ。また、現行のエレベーターが稼働し保全を継続する中、課題は次から次へと生まれます。それらを反映させたエレベーター開発もまた永遠の開発テーマに。エレベーター開発に終わりはありません。だからこそ、追求しがいがあります。