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分速1,260m超高速エレベーター

世界最高速への道

世界最高速エレベーター開発 [快適性]
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これまでになかった技術で乗り心地も最高クラスに

中国・広州市の超高層複合ビル「広州周大福金融中心」に日立が納入したエレベーターは、定格速度分速1,260mで走行し世界最高速を達成した。地上1階から95階のホテルロビーまでの440mを約42秒で結んでいる。この世界最高速エベレーターを実現するために欠かせないのが、「駆動性」と「安全性」、そして「快適性」だ。超高速での走行は、従来問題とならなかった要因により利用者の快適性が低下する。この問題を解決するために、日立はさまざまな新技術を開発した。

※2022年8月現在、日立調べ

超高速走行で発生するさまざまな問題

一般的なエレベーターにおいて、乗り心地の問題となるのは「振動」と「騒音」だ。加えて今回は、440mという高低差が「気圧変化」という新たな問題を生んだ。しかも毎分1,260mという桁違いのスピードにより、「振動」「騒音」「気圧変化」の問題が従来の何倍にも膨れ上がる。かご枠の構造設計に携わった機構装置開発グループの川端亮平は「分速1,260mになると、空気の流れやレールのわずかな段差や曲がりが、振動や騒音に大きな影響を及ぼします」と語る。

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アクティブガイドローラー
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昇降機事業部
開発生産統括本部 開発本部 装置開発部
機構装置開発グループ
川端 亮平

このレールの段差による「振動」を半減させる技術として開発したのが、上下アクティブガイド装置だ。加速度センサーによってかごの振動を検出し、アクチュエータによってばね力を制御することで振動を打ち消すアクティブガイド装置は、従来から製品化されていたが、今回は上下左右の4か所に加速度センサーとアクティブガイド装置を設置した。「高速になればなるほど、さまざまな外乱の影響を受けてしまいます。かごが水平に揺らされるだけでなく回転も発生する。いわゆるヨーイング、ピッチング、ローリングを抑えるために、アクティブガイド装置をかごの下だけでなく、かごの上にも設置して複雑な揺れに対応できるようにしました。しかし自由度が増した分、調整にはかなり苦労しました」と川端。

日立グループのシナジーを発揮

エレベーターの「音」については、低速では主に機械音が問題になるが、高速になると風を切る音が大きくなる。そこで取り入れたのが高速鉄道のカプセル構造だ。川端と同じく構造設計を担当した伊藤康司は「高速鉄道のように先端を流線型にすることで風の抵抗を減らし、かご内に音が漏れないように設計しました」と語る。設計にあたっては、日立が世界に誇る高速鉄道のノウハウが投入されている。「複数のモックを作って実験するとともに、流体解析ソフトウェアを使用して効果検証し、最適形状を検討しました。今回、高速鉄道で実績を積んだソフトウェアを使用したことで、実機に近い解析結果を短時間で得ることができました」と伊藤。

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昇降機事業部
開発生産統括本部 開発本部 装置開発部
機構装置開発グループ
伊藤 康司

一方、エレベーターの「気圧変化」で問題になるのは耳閉感だ。この耳閉感は、エレベーター上昇時に比べて下降時により強く感じられる。このため、下降時のエレベーター速度を制限するとともに、不快感を緩和するために、かご内の気圧を制御する装置を新たに開発し、かご内の気圧変化に緩急を付けている。「耳詰まり感を緩和するために、気圧の変化の度合いを緩やかにしています。気圧に緩急をつけることで、不快になる前に耳閉感を感じてもらい、能動的に耳抜きを行ってもらう気圧変化のパターンを作っています」と伊藤。そして、気圧シミュレーターで作成したパターンは、官能評価を実施。複数の被験者に参加してもらい、実際に不快感を軽減できるのかを評価した。評価方法については、ノウハウを持つ日立グループ会社に協力を依頼。ここでも日立グループのシナジーが生かされている。

新しい価値を生み出したという自信を未来に

実はエレベーターはドアの開閉が多く、摺動する部分が多いため、空気が漏れやすい構造になっている。気圧の緩急をコントロールするためには、かごの気密性を高めることが前提条件だ。しかし、当初の設計では気密性を担保できず、気圧を思うように上げることができなかった。「コーキング材を使って、かごまわりの気密性を高めていたのですが、それでもなかなか気圧が上がらず、気圧制御装置のファン回転数を上げて、騒音だけが大きくなってしまった」と機械品品質保証グループで、かご枠の強度や気密性の評価などを行った立山博之。 そこでこの問題の解決策を考案したのが、機構装置開発グループの仮屋智貴だ。仮屋は「気圧変化によって自然に発生する気流を利用して隙間が閉じる装置を考案し、特許も取得しました。出荷まで残り1年余りというタイミングで構造を変える決断だったので、関係者を説得するのに苦労しました」と語る。仮屋の提案は、気密性の向上に大きく貢献した。

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品質保証本部
昇降機製品品質保証部
機械品品質保証グループ
立山 博之

しかし設計を変えただけで、すべてうまくいったわけでない。現地でかごを組み立てた後の最終調整に最も苦労した。エレベーターを納めるには、中国の公的認定機関の認証を取得しなければならない。そのためには、超高速で走行するエレベーターを急停止させる制動試験が必要であり、かなりの衝撃が発生する。必死になって作り込んだ快適性がすべて崩れてしまう可能性があった。立山は「大きなプレッシャーの中、現地の作業者を含めて全員で協力して、試験前の状態よりもさらに良くしようという気持ちで調整しました。大変でしたが、みんなでよい製品に仕上げ、お客さまに提供できたことが嬉しかった」と語る。

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昇降機事業部
開発生産統括本部 開発本部 装置開発部
機構装置開発グループ
仮屋 智貴

今回の世界最高速エレベーター開発は、入社一年目で配属された川端や伊藤をはじめ、若手を主体としたプロジェクトだった。多くの先輩や専門家の協力を仰ぎながら、自由な発想と情熱で、これまでになかった新技術を開発していった。仮屋は「通常の開発では、ここまで多くの新技術を一度に投入する機会は殆どありません。今回、知見のないところから新しいものを作り出せたという自信を持てたので、今回得た経験を今後の開発にも生かしていきたい」と語る。ここで貴重な経験を積んだ若手が主力となり、日立エレベーターの未来を築いていく。

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