エスカレーターの
安全な利用を
促進するために
多様な利用者が
行き交う地下鉄駅で
情報発信
条例施行と
併せて全国的に
注目を集める
名古屋市では2023年10月1日から「名古屋市エスカレーターの安全な利用の促進に関する条例」が施行されました。利用者はエスカレーターを立ち止まって利用することが、管理者は利用方法を周知することが、それぞれ求められます。
これに伴い、名古屋市営地下鉄の金山駅では周知のための掲示が始まりました。
名古屋市スポーツ市民局 市民生活部 消費生活課 消費生活係長の渡邉弥里氏に、設置目的や利用者の反応などについてお話を伺いました。
エスカレーターは立ち止まって利用することを前提に設計されていますが、名古屋市では左側に立って乗り、急いでいる人などのために右側を空けておく慣習がありました。
「昨年春、市内10箇所でエスカレーターの利用実態調査を行ったところ、21.3%の方が歩いていました。朝の通勤時間帯はさらに多く、39.4%の人が歩いて利用していました」(渡邉氏)
しかし、エスカレーターでの歩行はリスクを伴います。歩いている際に転倒することもあれば、立ち止まって乗っている人にぶつかって転倒させる恐れもあります。また、ケガや障がいなどで右側のベルトにつかまる必要がある人もいます。
「みなさまに安全にエスカレーターをお使いいただくために、名古屋市では立ち止まって利用することを義務付ける条例を制定し、その周知のための情報発信が必要になりました」(渡邉氏)
名古屋市営地下鉄金山駅から金山総合駅へとつながるエスカレーターにラッピングが施されている
名古屋市では条例に関するチラシを作製・配布したほか、市営地下鉄の駅のエスカレーター付近でも情報発信を行うことにしました。
「乗り口にフロアラッピングを貼ろうと考えていたところに、日立ビルシステムさんからステップやフロアへのラッピングを提案していただき、効果が高そうだと感じました。ただ、ステップに貼るのは初めてで、運用への影響を検証するために、まずは金山駅のエスカレーター1基から始めたのですが、問題なく稼働しています」(渡邉氏)
ラッピングのデザインは多文化共生を意識し、『DON'T WALK』と英語表記を入れたほか、イラストも添えました。エスカレーターの利用に関する条例施行は埼玉県に次ぐ2番目で、エスカレーターそのものを装飾するラッピングの珍しさもあり、テレビや新聞などでも紹介されました。
「金山駅は通勤・通学の利用が多く、混雑時には左側に長い行列ができていましたが、条例施行後は2列に並んでご利用いただいています。立ち止まることを呼びかける表示を背負ったスタッフが右側に立ち続ける取り組みも話題を集め、条例の周知に一役買いました。このまま定着していってほしいと願っています」(渡邉氏)
ライザーマーキングは遠くからでも目につくようにし、ステップマーキングは交互に貼り付けてジグザク乗りを誘導
フロアラッピングはどこからでも目立つように大きく貼り付けている
エスカレーター横の壁には、名古屋市のキャラクターを使った啓発ポスターも掲示
名古屋市全域にエスカレーターの適正利用を広めるための活動はまだ始まったばかりです。
「一度染みついた慣習を変えるには時間がかかりますが、お伝えする内容や場面を工夫しながら粘り強く呼びかけていく予定です」(渡邉氏)
エスカレーターの乗り方などのマナーは時代とともに変わるので、多様性の時代にふさわしい、誰もが暮らしやすい社会にしていきたいです。
名古屋市スポーツ市民局
市民生活部 消費生活課 消費生活係長
渡邉 弥里氏
岐阜でサッカーの試合があったときも、名古屋市外からの利用者に向けてエスカレーター安全利用の呼びかけがあり、とても良いことだと感じました。
株式会社日立ビルシステム
中部支社 フィールドサービス部 保全技術グループ 主任技師
森川 真澄男
広報誌BUILCARE No.219より