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広域災害時のエレベーター復旧を迅速化する復旧支援システムを確立


2006年2月9日

モニタリングシステムによる正確な被害状況把握と
携帯電話のパケット通信機能を活用した連絡システムにより効率的な復旧を実現

株式会社日立ビルシステム(本社:東京都千代田区神田錦町、取締役社長:髙橋 秀明/以下、日立ビルシステム)は、大規模地震発生時などのエレベーター被害状況を遠隔のモニタリングにより迅速かつ正確に把握し、電話回線の輻輳規制を回避して出動指示や復旧報告が行える「広域災害時エレベーター復旧支援システム」を開発し、1月16日から本格運用を開始しました。

大規模地震発生時のエレベーターの早期復旧には、「どこで、どれだけのエレベーターの運行に支障が生じているか」という被害状況を早く正確に把握し、的確な指示をエンジニアに与えることが重要です。
地震発生による機器の故障については、従来から、日立ビルシステムの遠隔監視診断システム「ヘリオス」を導入している機種であれば、異常信号が発信され、状況把握の最前線である管制センターで確認できましたが、地震時管制運転システム*1により、乗員と機器の安全確認のためエレベーターを停止した場合には、お客様からの電話連絡を受けてから、現場に近いエンジニアに電話連絡で出動指示を行っていました。また、エレベーターかご内で閉じ込めが発生した場合にも、従来は、お客様からのかご内非常用インターホン通話や外部からの電話連絡により状況を把握し、復旧にあたっていました。
しかし、昨年7月に発生した千葉県北西部地震の際には、かご内閉じ込めならびに停止が同時多発的に発生し、管制センターや各営業所での受電対応が追いつかず、状況把握が遅れることにつながりました。また、管制センターや各営業所からエンジニアへの出動指示も、電話回線の輻輳規制の影響で滞り、エンジニアの初動態勢の確保に混乱をきたしました。結果として、復旧までに20時間*2を要しました。

  1. 地震計の動作を感知すると、エレベーターが自動的に最寄階まで運転し、乗客を安全に脱出させるシステム。
  2. お客さまの都合により建物内に入れなかった物件を除く。

今回のシステムは、被害状況を把握するためのモニタリングシステムと携帯電話のパケット通信機能を活用し、輻輳規制を回避して出動指示や復旧報告が行える連絡システムを組み合わせたものです。
モニタリングシステムは、日立ビルシステムの遠隔監視診断システム「ヘリオス」に地震計の動作を自動通報する機能を追加、早期にエレベーターの被災地域を特定し、地震時管制運転システムによるエレベーター停止の有無が不明な地域(震度4~5弱程度の地域)に対しては、管制センターからモニタリングを行い、各エレベーターの地震計動作状況を迅速に把握できるものです。これにより、千葉県北西部地震の際に、地震計が動作しエンジニアによる復旧作業が必要なエレベーターをすべて特定するのに12時間要したものを、同程度の地震であれば3時間以内に判断できるようになりました。
また、連絡システムは、エレベーターのメンテナンス用ツールとしてエンジニアに配備している専用の携帯電話を活用し、輻輳規制の対象となりにくいパケット通信で、地震時の本人安否確認や出動指示、復旧報告などを行えるようにしたものです。復旧状況は、管制センターや各営業所からリアルタイムで確認でき、効率的な復旧が可能となりました。

なお、日立ビルシステムでは、今回のシステムを用いた全社一斉の広域災害復旧対応訓練を1月28日に実施し、その効果を検証しております。今後も、業界に先駆けて復旧サービス体制の見直しや実地訓練を行い、広域地震災害における確実、迅速な復旧対応を目指します。

広域災害時エレベーター復旧支援システムの概要

  1. エレベーター被害状況把握モニタリングシステム
    1. 地震計動作信号の自動通報
      日立ビルシステムが独自に開発した遠隔監視診断システム「ヘリオス」に地震計の動作を自動通報する機能を追加し、半径12kmを目安に設定した全国約700カ所の納入先から地震計動作の信号を受信可能にしました。これにより、気象庁が発表する地震情報より早期に、地震によるエレベーター被災地域の特定が可能となりました。
    2. 被災地域のモニタリングによる出動要否判断
      地震計動作信号の自動通報による被災地域情報と気象庁の緊急地震速報による震度階情報をもとに、地震計が動作しエレベーターが停止しているかどうかが不確実な地域(震度4~5弱程度の地域)に対して、当社管制センターからすべての地震計付きエレベーターの動作状況を自動でモニタリングします。地震計動作状況は、1時間に10,000台を把握でき、震度5強程度以上の地域については、地震計の動作は確実として初動時にはモニタリング対象から除外し、不確実な地域にのみ行うことで、効率的な状況把握を実現しています。また、その情報は、管制センターをはじめ各営業所から社内WEBサイト上で閲覧でき、効率よく迅速に復旧体制を構築することが可能になります。
  2. 携帯電話のパケット通信機能を活用した出動指示・復旧報告
    日立ビルシステムでは、2005年10月から、エレベーターのメンテナンス用ツールとして、各エンジニアに業務用アプリケーション装備の携帯電話「スーパーキャリコン」を配備しており、大規模地震発生時には携帯電話のパケット通信機能を利用して、各エンジニアの安否確認や出動指示、復旧報告をリアルタイムで行えるようにしました。
    地震発生後、管制センターから各エンジニアに出動要請のメールが送信され、各人は携帯電話のパケット通信機能を用いて専用のWEBサイト上で、本人及び家族の安否確認、出動可否登録を行います。出動可否登録に基づき、専用サイト上で、各エンジニアにそれぞれの対応現場が割り当てられ、地震計動作状況を確認し、復旧作業に着手、順次復旧報告を登録します。
    輻輳規制の対象になりにくいパケット通信を利用することにより、社員の安否確認と具体的な出動指示の大幅な迅速化を可能となりました。また、各エンジニアが復旧登録を行い、その情報がリアルタイムに管制センターや各営業所で確認できるため、復旧遅れの地域に対する増員など、状況に応じた復旧管理を実現しました。
  3. 携帯電話のメール機能を活用した迅速な閉じ込め事故対応
    各エンジニアが、安否確認と出動可否登録を行った際に、本人の現在地も合わせて把握し、万一、閉じ込め事故が発生した場合には、現場の最も近くにいるエンジニアにメールで出動指示を出し、電話回線が輻輳規制されていても迅速かつ確実に連絡でき、平常時と同様の早期救出が可能となりました。

本件に関するお問い合わせ先

株式会社日立ビルシステム 法務部 (広報担当) 山添、小川
〒101-8941 東京都千代田区神田美土代町7番地
TEL 03-3219-9176(直通)

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